退職の経験がない方は、退職後の手続きが意外に多いとご存知ないかもしれません。退職後の手続きには期限が設けられているものもあるため、なるべく早く片付けてしまうことがおすすめです。退職後にはどのような手続きが必要になるのか、事前に確認しておきましょう。
会社に在籍している期間、つまり退職するその日までは健康保険証を利用できますが、退職日の業務を終えたら、速やかに返却する必要があります。万が一返却を忘れ退職日以降に健康保険証を使ってしまうと、医療費の負担額は3割ではなく、全額支払いに。
退職日前後は特に健康管理に気をつけ、なるべく早く健康保険の切り替え手続きを行うようにしましょう。
制服や社員バッチ、社員証、名刺、携帯電話、パソコン、事務用品、机の鍵など、会社から支給されたものは基本的にすべて返却することになります。制服の場合は、退職後クリーニングした上で返却するのが一般的。また会社から貸与されたもののうち紛失したものがある場合は、担当者に相談するなどの対応が必要です。
雇用保険に加入した証明として発行されるものです。この雇用保険被保険者証は、就職後会社の担当者が雇用保険の加入手続きを行った際に発行されますが、在籍中は紛失を避けるため通常は会社が保管します。そのため本人の手に渡るのは退職後です。
雇用保険は転職先の会社で引き継がれるため、退職後に再就職の予定がある場合はこの証明書を紛失しないよう大切に保管しておきましょう。
離職したことを証明するもので、本人がハローワークで失業給付金の受給手続きをする際に必要となる書類です。離職票は失業給付金の基本手当となる金額や、給付日数を決めるために使われます。
退職後に失業手当を受給したい場合や、退職後働く予定がある場合は忘れずに交付してもらい、受け取った際は内容に間違いがないか必ず確認するようにしましょう。
いつ健康保険の資格を喪失したかという確認のために必要な書類で、保険者ではなく会社が発行するものです。この健康保険資格喪失証明書は、国民健康保険に切り替える際に市区町村に提出します。
通常は12月の所得が確定した後に受け取るものですが、年度途中で退職した場合でも発行してもらえます。
源泉徴収票は再就職先の会社に年末調整をしてもらう場合や、自分で確定申告を行う際に必要になる書類です。
会社に年金手帳を預けている場合は忘れずに返却してもらいましょう。年金手帳はこれまでの年金への加入状態を調べたり、就職・退職の手続きを行ったり、年金受給の手続きを行う際に必要になります。
国民健康保険は主に市区町村が運営する医療保険です。保険料は住んでいる地域によって異なりますが、基本的には前年の所得や加入者数、年齢をもとに計算されます。さらに固定資産を算定の対象とする地域も。
保険料について不安がある場合は、保険を切り替える前に住んでいる地域の役所で確認しておくと良いでしょう。
国民健康保険の加入手続きに必要な書類は「健康保険資格喪失証明書」と運転免許証などの「本人確認書類」、「マイナンバー」「通帳」「印鑑」です。
退職日の前日までに被保険者である期間が2ヶ月以上継続している場合、最大2年間、前職の健康保険に引き続き加入できます。
ただし在職時は会社が保険料を折半してくれましたが、退職後は全額自分で支払わなければなりません。
任意継続被保険者制度を利用する場合は、退職日から20日以内に申請する必要があります。
任意継続の手続きに必要な書類は、「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」と「本人確認書類」「印鑑」です。
家族が加入している健康保険に、扶養家族として入る方法です。退職後、転職や再就職をしないのであれば、いくつかの要件を満たすことで配偶者や親の扶養に入れます。
失業給付を受ける場合、健康保険によっては扶養の要件に該当しないこともあるため、事前に問い合わせておいた方が良いでしょう。
扶養に入れない場合は上記2つの方法から選択します。
退職後、転職・再就職が決まっていない場合は、家族の扶養に入るか、国民年金保険の切り替え手続きが必要です。
厚生年金から国民年金保険へ切り替える場合は、退職日の翌日から14日以内に、市区町村の年金窓口で所定の手続きを行います。
失業手当を受け取る場合は離職証明書が自宅へ届いた後、速やかに管轄のハローワークへ行き、失業手当の手続きを行いましょう。失業手当を受給できる期間は、原則退職日の翌日から1年間です。1年を過ぎると受給途中でも支給が打ち切られてしまうため、1年間のうちに受給を終えるよう注意しましょう。
病気や出産などの理由ですぐに働けない場合、所定の手続きを行えば、失業手当の受給資格を最大3年まで延長することが可能です。本来の受給資格は1年間のため、合算すると最大4年まで延長できることになります。
退職後でも、退職した年の「1月1日から12月31日まで」に所得がある場合は所得税を支払わなければなりません。
退職金は所得税の対象となりますが、全額が対象となるわけではなく他の所得と分けて「退職所得」として税金額を計算します。
退職金の所得税の計算式は「所得税額 = 課税退職所得金額 × 所得税率 - 控除額」となります。
退職所得控除額は以下の計算式で算出します。
課税退職所得金額は、「(退職金 - 退職所得控除)× 1/2」となります。
会社員の場合は6月から翌年の5月までの住民税を12分割し、その金額が毎月給料から差し引かれる「特別徴収」の仕組みがとられています。転職先が決まっている場合、新しい職場でも同様に「特別徴収」されますが、転職先が決まっていない場合は退職前に、「特別徴収」から「普通徴収」への切り替え申請を行いましょう。