老後の必要最低生活費は?

人並みの生活を送るための費用を考えてみる

マネー

老後どの程度の資産が必要になるのか、まずはデータから紐解きます。日本は近年デフレ傾向が強く、比較的支出を抑える生活もできました。ですが、今後一層高齢化が進む社会背景を考えると、質素な生活を心掛けていても、絶対的な支出金額は増える可能性があります。

生活保障に関する調査データから見る必要最低生活費

多くの人が考える、1ヶ月の生活費の下限目安を、まずはデータとして見てみましょう。

令和元年度に生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」というデータがあります。 その中で「老後の最低日常生活費」という設問に対して、一番多かった回答は月額20万~25万円の29.43%で、平均すると22.1万円という結果が出ました。

  • 15万円未満 5.9%
  • 15万~20万円未満 13.0%
  • 20万~25万円未満 29.4%
  • 25万~30万円未満 13.1%
  • 30万~40万円未満 17.0%
  • 40万円以上 1.9%
  • 不明・無回答 19.6%

引用元:生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」

この調査は全国18~69歳の男女個人4千人を超えるサンプル数で、面接聴取したもの。生活保障意識や生命保険の加入状況などを調べる調査ということもあり、比較的将来設計に対する意識が高い人たちが母集団だと考えてもいいでしょう。

最低日常生活費という前提になると、食費や公共料金などは、誰もができるだけ切り詰めることを考えると思います。

一方、個々の家庭によって最低日常生活費であっても金額差が出やすいのは住居と医療費でしょう。前者はマイホームと賃貸では月々の出費が違うでしょうし、後者はケースバイケースとなり高齢者は医療費で優遇されているとはいえ、状況によっては大きな支出になることも考えられます。

ゆとりのある老後を過ごすためにはいくら必要?

22.1万円でもまあまあ高い気がしますが、ゆとりある1ヶ月の生活費目安も調査結果があるので見ていきましょう。

同じく「生活保障に関する調査」の設問では「ゆとりある老後の生活費」に対する回答で、平均36.1万円という結果も出ています。これは最低日常生活費の22.1万円と比べれば約1.6倍、差額は14万円です。

この違いとなる主な要因は旅行・レジャーや趣味・教養、そして日常生活費の充実となっていて、老後の生活においては「ゆとり」の対価となるものが何か、ある程度傾向がわかってくるともいえます。

  • 20万円未満 2.8%
  • 20万~25万円未満 7.3%
  • 25万~30万円未満 10.6%
  • 30万~35万円未満 20.8%
  • 35万~40万円未満 9.5%
  • 40万~50万円未満 13.7%
  • 50万円以上 15.6%
  • 不明・無回答 19.6%

引用元:生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」

ゆとりある老後の主な出費の内訳

ゆとりある老後イメージ
  • 旅行レジャー 60.7%
  • 趣味教養 51.1%
  • 日常生活費の充実 49.6%
  • 身内のつきあい 48.8%
  • 耐久消費財の買い替え 30.0%
  • 子どもや孫の資金援助 22.4%
  • 隣人友人のつきあい 15.5%
  • 貯蓄 3.7%
  • その他 0.8%

引用元:生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」

ただし、これは令和元年度の調査であり、この時点での高齢者の生活を見て、ゆとりのある世帯の人たちが行っている行動や支出に影響されている部分も少なくありません。どちらかといえば、現役世代よりもゆとりのある老後世代が少なからずいて、旅行や趣味を満喫しているというイメージもあることから、このような回答をしている面もあるでしょう。

とくに、一番のボリュームゾーンである団塊世代は2019年現在、70歳前後の人がほとんど。常に消費をリードしてきた世代であり、シニアマーケットでもその傾向は踏襲されています。

退職金や企業年金などによって余裕のある世代の生活ぶりを見て、同じくらいのゆとりを持ちたいと考えるのも自然ではあるのですが、今は現役でそう遠くない将来に老後を迎える世代にとって、同等のゆとりある生活をするのはそう容易ではなくなる可能性が高いと考えてください。

女性ひとりの最低必要額は2,500万円

厚生労働省が発表した「平成30年簡易生命表の概況」によると、女性の平均寿命は、87.32歳、男性は81.25歳となっています。ただ、これはあくまでも平均寿命であり、90歳以上まで長生きする方も当然いらっしゃいます。女性の場合は、2人に1人の割合で、90歳まで生きるといわれているのです。

引用元:厚生労働省 平成30年簡易生命表の概況

65歳から年金受給をする場合、例えば毎月8万円の年金収入があり、90歳まで25年間もらうとすると、合計2,400万円を受け取れることになります。一方、生活費に月15万円かかった場合、90歳までにかかる支出の合計金額は4,500万円です。つまり、最低でも2,100万円は必要なのです。さらに、病気で通院や介護が必要になった場合などのことも考えると、合計2,500万円程度はみておいた方が良いかもしれません。

年金は収入の額によって、もらえる金額が変わるので、年金収入が少ない方の方が、用意しておく金額は多くなります。

寿命は誰にもわからないため、最低で90歳まで生きると仮定して、生活費を準備しておくことをおすすめします。

厳しい日本の経済状況を加味した老後設計を

今のアラフィフ世代は、団塊の世代ジュニアといわれる層が含まれます。団塊の世代の父母をもつこの世代は、リタイア後もパワフルに趣味やレジャーに興じる親の姿を間近に見てきました。

アラフィフ世代の親たちの時代は、会社に入社してバブル期を経験しています。しかも、バブル真っ只中は40代でバリバリ働いていた時期ですから、現役時代の給料やボーナスもそれなりにもらっていたでしょう。資産形成においても、バブル後に長い期間景気は低迷したものの、右肩上がりの経済の恩恵を少なからず受けていると思われます。

では、今のアラフィフ世代は?雇用の流動化で退職金制度がない会社もあります。また現行制度では、65歳から年金の受け取りができますが、今後年金制度の変更がないともいえません。重要なのは、仮に年金受給が70歳になっても、きちんと生活ができるように今から準備をしておくことです。

資産運用をする、70歳まで働くための学びを始めるなど。アラフィフ世代の今だからこそ、10年後、20年後の自分をイメージして、どう過ごしていたいかを、ゆっくり考えてみませんか。

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記事監修:中野令子

現在2児の母。出産前までは大手証券会社で長年営業に従事。自営業の夫の仕事を手伝う傍ら、自身の経験を活かし、ウェブライターとして活動中。わかりやすいをモットーに、さまざまな場面でのお金について解説します。

保有資格
FP技能士1級、損害保険募集人、第一種証券外務員