退職金が出ない場合の必要資金

退職金が普通ではない時代に備えた資産形成を考える

オフィスイメージ

東芝に代表されるような世界レベルの企業でさえ、経営に行き詰まることがある昨今。そういった状況で、会社は個人の資産を守ってはくれません。自分の人生をより安定したものにするためにも、先行きの退職金を絶対的なものとはせず、常に資産形成しておくことが重要となります。

退職金とはどういった制度なのか

退職金(正式には退職一時金制度)とは退職時に退職金を会社側から支払われる制度。退職金規定に沿って支払われるため、退職するまでに会社の規定が変わらない限り、経営状況に関わらず支払いが確約されます。

退職金は法律にはない

退職金は法律で定められた制度ではありません。それぞれの会社で規則が定められている制度です。原則的に就業規則で定めていなければ、退職金を支払わなくても違法にはなりません。

退職金は、企業に長年勤めた功労をねぎらう意味で支給される給付制度です。定年退職した社員はもちろんのこと、若いうちに会社を退社した場合でも退職金が支給される場合もあります。

「退職金を受け取れるか」「いくら支払われるのか」は会社の就業規則の内容によって異なるので、しっかり就業規則を確認してください。

退職金制度がある企業の割合

厚生労働省が発表した平成30年「就労条件総合調査結果の概要」によると退職給付制度の有無は、従業員数1,000人以上の企業が92.3%。30人から99人の企業は77.6%と退職金制度を取り入れている企業が14.7%少ないという結果が出ています。

退職一時金は、大企業ほど支給される可能性が高いといえますが、5年前と比べて30人から99人の企業の数字は5.6ポイント上昇しており、退職一時金に限れば74%から82%に上昇しており、退職金制度が充実してきていることが分かります。

また、退職年金制度がある会社について、支払い準備形態を見てみると、厚生年金基金20%、確定給付 企業年金43.3%、確定拠出年金(企業型)47.6%で、この5年で退職年金制度の見直しを行った結果、厚生年金基金の割合が44.8%からずいぶん減少しました。

退職金制度にもトレンドがある

退職金には、年数に比例する年功型や貢献した実績によって算出する成果報酬型の算出方法があります。年功型はその名の通り、勤務した年数によって金額があがっていく制度です。

成果報酬型は将来の退職金を確定せず、その時の役職や職能等級によって掛け金を設定し、積立していく制度。個人の肩書に捉われることなく、個人の価値観や能力・実績に応じて評価が付けられます。長く会社にいれば多くの退職金がもらえるわけではなく、個人の成果が直接評価に影響する制度です。

また成果報酬型の一つで「ポイント制退職金制度」があります。勤続年数・職能等級・役職などの要素にポイントを設定し、獲得したポイントに応じて退職金が算出される制度です。

退職金にも時代に合わせたトレンドもあることも覚えておきましょう。

退職金を受け取れるタイミング

いつ退職金を支給されるのかは、会社によって異なります。

一般的に退職が決まってから、担当者が計算や書類作成など、所定の手続きを進めます。手続きには時間がかかりますし、中小企業で退職金共済を利用している場合は、さらに時間が必要です。退職後、1~6ヶ月以内に支払われる場合が多いですが、中には1年後に支給されたというケースもあります。

万が一、退職金を支払ってもらえない場合は、会社側の違法行為にあたります。担当者に問い合わせても支払われない場合は、労働基準監督署へ問い合わせましょう。

退職金にかかる税金と手取額の計算方法

「退職一時金」は金額が大きいため、税金も高くなりますが、税金による負担を減らすように国税庁が配慮しています。他の所得とは別に課税され、「退職所得控除」が受けられます。

退職所得控除を受けるには、「退職所得申告書」を会社側に提出します。その後の手続きは会社側で行われ、退職一時金の受け時に、取源泉徴収などの申請も不要です。

控除額の計算方法

勤続20年以下の場合:40万円×勤続年数 ※80万円未満なら80万円。

勤続20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

退職金から控除額を引いて、2分の1した金額が課税対象となります。

【例】勤続30年、退職金2,000万円の場合

例えば、勤続30年で退職金2,000万円として計算すると以下のようになります。

退職所得控除額:800万円+70万円× (30年-20年)=1,500万円

退職所得:(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円

この250万円が課税対象となります。

手取額の計算方法

上記の例でさらに手取額を計算すると、以下のようになります。

(250万円×税率10%-控除額9.75万円)×復興特別所得税102.1%=15万5,702円

250万円×住民税率10%=25万円

2,000万円−15万5,702円−25万円=1,959万4,298円

したがって、2,000万円を例とした場合の退職金の手取額は、1,959万4,298円となります。

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記事監修:中野令子

現在2児の母。出産前までは大手証券会社で長年営業に従事。自営業の夫の仕事を手伝う傍ら、自身の経験を活かし、ウェブライターとして活動中。わかりやすいをモットーに、さまざまな場面でのお金について解説します。

保有資格
FP技能士1級、損害保険募集人、第一種証券外務員