内科・循環器の専門医であり、大阪樟蔭女子大学教授でもある、石蔵文信医師が名付けたもので、医学的な病名ではありません。夫源病は、夫(パートナー)の言動などによって女性がストレスを感じ、心身に不調をきたすことを指します。石蔵医師は、男性更年期外来に通って来る中高年の患者さんを診察していく中で、この夫源病に気付いたそうです。
夫源病は、夫に対する強いストレスによって「自律神経」や「ホルモンバランス」が乱れ、頭痛やめまい、動悸、不眠などの症状を起こします。この症状は40代〜60代女性に多い「更年期障害」に似ていることから、夫源病が中高年女性の不調に大きく関わっている可能性が高いとの見方もあります。
また、夫源病は中高年だけが訴える病気ではなく、結婚したばかりの若い夫婦間や、子育て真っ只中の30代、60歳以降の女性にも多いそうです。
夫源病は、いつ発症したと明確にわかるものではなく、気づいたときには夫源病になっていたというケースがほとんどです。ただ、夫源病を放置すると、最終的に離婚を選択する夫婦も多く、できれば症状が軽いうちに対処したいもの。
以下のような症状が見られたら、夫源病の疑いが高いといえます。思い当たるケースがないかチェックしてみましょう。
夫がいないときに気分が楽になると感じたら、夫源病の兆候を疑った方が良いかもしれません。
夫源病が更年期障害に関わっている可能性は大いにあり得るため、更年期の症状があって、かつ夫(パートナー)にストレスを感じる場合は、夫源病のサインと考えて良いでしょう。
男性が想像する以上に、夫源病に苦しむ女性の辛さは深刻です。
例えば、仕事で疲れているとはいえ、休日に家でゴロゴロ寝てばかりいたり、好きなときに食事をしたりする夫がいます。自分では休日を気楽に過ごせているかもしれませんが、一緒にいる妻には強いストレスを与えていることも。
家事をする時間がズレたり、食事の支度をする回数が増えたりなど、普段より妻の負担は大きくなるのです。
何の気遣いもなく、自分勝手な夫に妻はストレスを覚え、気分の落ち込みや蕁麻疹などの症状が現れる例も多くなっています。
夫の定年後に、妻が夫源病を発症する例も多いです。
夫が現役のときは、仕事で家を開けることが多かったため、身勝手な小言にも耐えられていたものの、定年後は1日中家にいることも増えます。朝から晩まで夫に小言を言われ続け、うつ状態になった例もあるのです。
離婚をした途端に、さまざまな不調から解放されたという女性も多く、夫の存在がいかに大きな負担となっていたかが窺い知れます。
夫源病になるのは、夫の自覚のなさが問題です。
以下のようなタイプの夫の場合、妻は大きなストレスを覚えている可能性があります。
上記のうち、8個以上当てはまる場合は、夫源病の確率が高いです。夫の存在自体がストレスになり、すでに症状が現れている場合もあります。
5〜7個当てはまるという方は、夫源病予備軍かもしれません。放っておくと知らずのうちに夫への不満がつのり、夫源病になる可能性も。
4個以下という方は、現状では夫源病の可能性は低いでしょう。ときどき喧嘩をして言いたいことを言い合い、ストレスを解消することが大切です。
夫にそれほど問題がない場合でも、夫源病を発症する女性がいます。
以下のようなタイプの妻の場合は夫源病になりやすく、当てはまる項目が多いほど、注意が必要です。
上記に当てはまる方は、ストレスを溜めやすい傾向にあります。
「夫を立てるのは当たり前」「この程度のことは我慢しなければ」など、夫へ対する不満がありながら、自分の気持ちを押さえ込んでしまうと、大きなストレスに。良妻賢母の意識が強すぎると、夫や子供にも過剰な期待を持ってしまい、それが満たされないことでストレスになるケースもあります。
夫に対して不満を持っていると、次第に夫婦間での会話がなくなっていきます。
朝起きたら「おはよう」、食事時には「いただきます・ごちそうさま」、会社へ送り出すときには「いってらっしゃい」など、小さな声がけで良いので、コミュニケーションをとることを意識してみましょう。
家にこもってばかりいると、余計にストレスが溜まります。ときには「妻」として背負わされている仕事を休業し、リフレッシュのための旅行を2〜3日かけて実行してみましょう。
旅行中は夫のことを忘れ、旅に集中して楽しむことで心身ともにリフレッシュでき、ストレスも解消されます。
大声を上げたり、叫んだり、声を出すことでストレス解消につながります。一人カラオケや友人とお茶をして愚痴を聞いてもらうなど、心に溜め込んだ不満を発散させる場を意識的に作ることが大切です。
ずっとやりたいと思っていたことを始めたり、新たな趣味や仕事を見つけたりすると、気分転換にもなります。
夫源病になると夫との会話を避けがちになりますが、夫の言動を変えさせるには、自分の気持ちを夫に伝えることが重要です。要求を一方的に押し付けるのではなく、こうしてくれると助かる、やってくれると嬉しいなど、なるべく穏やかに伝えてみましょう。
夫の言動にイライラしたら、その場ですぐにぶつけることを意識してみましょう。自分の気持ちを素直に伝えることで、相手も当然ながら反論したり、不満をぶつけてきたりするため喧嘩になります。しかし、口喧嘩はコミュニケーションの一つ。夫婦喧嘩を避けたいがために意見を言わずにいると、夫と意思疎通がとれません。
プチ喧嘩の目指すところは、夫婦が気兼ねなく本音を言い合える関係性を築くことです。
思い切って自分の不満を夫にぶつけても、夫が黙り込んでしまってプチ喧嘩に発展しない場合は、夫と距離を置いてみましょう。
家庭内で別居ができない場合は、しばらく家を出ても良いです。あくまでもプチ別居なので、住まいを別々にするのではなく、夜だけ留守にしたり、3〜4日程度の旅行へ行ったりなど、家を空ける時間を増やすのです。
お互いに距離を置くことで冷静になり、感謝の気持ちが湧いたり、一人でいる時間も気楽で良いと感じられたりなど、夫の気持ちにも変化がみられるように。
プチ別居は夫婦関係を再構築するために、相手との距離感を保つ練習と考えると良いでしょう。
夫源病とは逆で、妻の言動に対して夫がストレスを抱え、体調不良になる「妻源病」もあります。家事と育児に熱心な妻に、夫がついていけないというパターンです。
妻に比べ、夫は外出の機会が多いため、妻源病になりにくいものの、家にいる時間が増える定年後などに、体調不良を訴える夫が多くなっています。
妻原病を防ぐには、夫源病への対策と同様に、プチ別居やプチ喧嘩でストレスを発散させることが大切です。
夫婦がお互いに心地良いと感じる距離感を保ち、ストレスを溜め込まないようにしましょう。