持ち家と賃貸、どっちがお得なの?

老後は持ち家と賃貸どっちがいいの?

賃貸と持ち家、老後の住居としてどちらを選べば良いのか、悩む方は多いのではないでしょうか。賃貸であれば、高齢者でも借りられるのかという不安もあります。持ち家があるなら、今の家に住み続けるか、あるいは住み替えるか迷うところでしょう。

では持ち家と賃貸では、どちらがよりメリットが多いのかを探ってみましょう。

持ち家率は下降気味

総務省統計局が行った「住宅・土地統計調査」によると、全国の持ち家世帯率は、約6割。都道府県別にみた場合、富山県が約8割と最も高く、次に秋田県、徳島県が約7割、愛知県、北海道が約6割と続きます。持ち家率が最も低かったのは東京都。約4割にとどまっています。

年齢別にみた場合、30代の持ち家世帯率は約4割、40代では約6割、50代では約7割となっており、30代より40代、40代より50代と持ち家世帯率は上がっています。ただ年別にみると、どの世代でも持ち家率は減少傾向にあり、今後も低下していくと考えられます。

50代で賃貸住宅を選択する人が多くなっている背景には、高齢者向けの住宅が増えていることがあげられます。政府が高齢者向け住宅の建設を後押ししていることも手伝って、近年「サービス付き高齢者住宅」が急増。見守りサービスが活用できるので、一人暮らしの高齢者には人気が高くなっています。中には、持ち家があっても「サービス付き高齢者住宅」に入居する方もいるようです。

持ち家と賃貸、どちらがお得かは条件によって変わる

持ち家と賃貸、結局どちらがお得かという問題に結論はありません。

何歳まで生きるのか、いくらの住宅を購入するのか、家賃いくらの物件を借りるのかなど、条件によって試算結果は大きく変わります。例えば、平均寿命でシミュレーションしたとしても、実際に何歳まで住むのかは誰にもわかりません。予想から大きく外れれば、生活費などの負担も増え、新たに資産の見直しも必要になってきます。

人それぞれ価値観やライフスタイルが違うため、自分の生活と照らし合わせながら、どちらを選択するか判断する必要があるでしょう。

持ち家と賃貸の主な必要経費

持ち家の場合は、ローンの返済やリフォーム費用、固定資産税、管理費などがかかります。一方賃貸の場合は、家賃や管理費、引越し費用、更新料などが必要になります。

仮に、東京都23区内にある新築マンションで、専有面積70m2、3DK〜3LDKの間取りで、30歳から80歳まで住む場合を条件に試算してみましょう。

持ち家の場合

上記のマンションを持ち家として購入する場合の平均価格は、4,743万円です。(江戸川区のマンション相場)

4,700万円の住宅ローンを、フラット35、金利1.83%、元利均等、ボーナス払い無しで組んだ場合、毎月の返済額は15.2万円になります。返済総額は、6,369万円です。

マンション物件なので修繕積立金や管理費が必要になります。毎月2万円を30歳から80歳まで50年間支払うと、1,200万円かかります。返済総額を合算すると、トータルで7,569万円。これに固定資産税が毎年加算されることになります。

賃貸の場合

持ち家の条件にならい、江戸川区の新築マンションを検索すると、家賃相場は2LDK〜3LDKの間取りで月11.63万円です。3LDK〜4DKの場合では、月16.98万円となっています。これを平均すると、一ヶ月の家賃は14万円程度になります。30歳から80歳まで50年間すみ続けた場合、家賃総額は8,400万円。管理費を月1万円支払うと、50年間で600万円必要です。合計で9,000万円になりますが、更新料や住み替えの場合は引越し費用がプラスされます。

上記の条件で計算した場合、持ち家の方が1,500万円、費用が少なくて済むという結果になりました。

ただ、賃貸の場合でも、住み替えでより家賃が低い物件へ移ることも可能です。条件の選び方で差額が大きく変化するため、上記の結果は、あくまでも大まかな計算と考えてください。

持ち家の場合は、住宅ローンを完済すれば、その後にかかる費用は主に修繕費や管理費のみになります。一方賃貸の場合は、長く住み続ける限り、家賃を支払う必要があります。そのため、持ち家より計画的に貯蓄することが重要です。

持ち家と賃貸のメリットとデメリット

賃貸と持ち家、それぞれに良い点もあれば、ネックとなる点もあります。老後の暮らしを決める重要な局面ですから、より良い選択ができるよう、それぞれのメリットとデメリットを徹底的に比べてみましょう。

持ち家のメリット

住宅ローンを払い終えると、持ち家は自分の資産となるため、それを担保に融資を受けられます。もちろん自分の物ですから、自由にリフォームも可能。老後を見据えたバリアフリー化も時期を選ばず行えます。

広々とした空間で、外部からの騒音もある程度抑えられるのも魅力の一つです。

築年数が浅い場合は、建物の断熱性や耐震性も高く、老後も安心して暮らせるでしょう。

修繕費や固定資産税などはかかりますが、毎月の家賃の支払いとは無縁の生活が送れます。

また持ち家が不要になった場合は売却も可能ですが、賃貸物件として貸し出すことで、月々の家賃収入を得られます。

持ち家のデメリット

持ち家はローンを支払ったら自分の物になるため、大きなメリットとしてあげられることも多いですが、35年のローンを支払い終えるころには、住宅も老朽化しています。購入してから大なり小なり修繕やメンテナンスを行ってきたものの、さらに20年、30年と住み続けるのであれば、大規模なリフォームや建て替えを行うことも考慮する必要があります。

また、子育て時期とローン返済時期が重なるケースが多く、返済途中で収入がなくなれば、破産してしまうリスクもあります。

住宅ローンを組む年代によっては、支払いが老後まで続くこともあり、年金収入だけでは支払えないとなると、持ち家を手放す羽目に。そうしたリスクを避けるためにも、繰上げ返済を利用して、なるべく早めにローンを完済することが大切です。

住み替えたい場合には、賃貸より面倒な点はデメリットでしょう。また長く住めば住むほど資産価値も下がるため、いざ売却しようとしたときに価格の安さにガッカリすることもあります。

賃貸のメリット

初期費用として敷金や礼金などを支払えば、特に修繕やメンテナンスも必要なく、あとは毎月の家賃や管理費を支払うだけで済みます。契約によって更新料や火災保険料などが必要になりますが、数千円程度の負担でおさまります。

設備が壊れた場合は、自分に過失がなければ、大家さんが修繕費を負担してくれます。

引っ越したい時に、すぐに実行できるのもメリットの一つです。家族構成やライフスタイルに合わせて、自由に住み替えられます。近隣トラブルが発生しても、引っ越せばまた新たな気持ちでスタートできるので、精神的にも気楽に暮らせるでしょう。

老後に「サービス付き高齢者住宅」や介護施設に入ることになっても、賃貸契約を解除すれば、後は退去するだけ。面倒な手続きも不要です。

賃貸のデメリット

賃貸物件では、持ち家と違って自由に内装を変えたり、設備を入れ替えたりなどの行為はできません。たとえ変更しても、退去時には元の状態に戻す必要があります。そのため、原状回復が無理な大掛かりなリフォームなどはできないということになります。

上の項目でも解説したように、賃貸の最大のデメリットは、家賃を生涯払い続ける必要があるという点です。老後に年金生活になると、生活費が捻出できない場合は、貯金を取り崩すしかありません。貯蓄の減りが早いことで、不安を感じる場合もあるでしょう。

高齢になってから新たに賃貸契約を結ぶ場合に、年金収入が少なかったり、自然死の可能性があると判断されたりすることから、契約を断られるケースもあります。

生涯賃貸住宅で暮らし続けるのであれば、現役のうちに老後の蓄えを十分に確保しておくことが大切です。

老後の住まい選びのポイント

持ち家と賃貸、いずれを選ぶにしても、住居の形態についても考えておく必要があるでしょう。希望の住まいを選ぶポイントには、以下のようなものがあります。

一戸建てかマンションか

最近は、老後の住まいとしてマンションを選択する方も増えています。マンションは、オートロックや管理人の常駐など、セキュリティがしっかりしていることや、エレベーターが設置されていること、バリアフリー化されていることなどから、高齢者に住みやすい環境になっています。一戸建て住宅と違い、共有スペースなどの清掃はマンションの管理会社が行うため、手間がかからないという点も、マンションが選ばれる理由の一つとなっています。

一方で、一戸建て住宅を好む方もたくさんいます。一戸建てはマンションと違い、上下階や隣家からの騒音に悩まされることがなく、管理費や駐車場代などのコストもかかりません。また、家庭菜園や庭づくりなど、老後はこれまでできなかった園芸などの趣味に勤しみたいという方にも一戸建て住宅は人気です。

新築か中古か

新築物件は、設備や機能などが充実していて、全てが新しいという満足感が得られます。ただ、価格面では悩む方も多いのではないでしょうか。物件によっては契約時に、まだ工事が完了していない場合もあります。住んでから不具合が出るケースもあります。

その点、中古物件は価格も安く、間取りや設備などを内覧して確認した後で契約することが可能です。住み慣れた地域で物件を探す場合は、中古物件数の方が豊富で、自分の条件に合った物件を見つけやすいという利点もあります。

また、中古物件を購入しリフォームすることで、自分好みの間取りや設備に変えるという選択をする人もいます。

老人ホーム・サ高住

自宅以外の選択肢として、老人ホームがあります。施設に入居する場合は、食事や掃除、買い出しなど、手厚いサポートが受けられます。

しかし、老人ホームを検討したいけれど、まだまだ体が元気に動くという方には、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)という選択肢もあります。サ高住は利用者の要介護度や希望に合わせて、サービス内容が決められるメリットがあります。安否確認や生活相談が義務付けられているので、もしもの時も安心できます。

都市部か郊外か

老後の住みかえを考えた時、どこに住むかも重要なポイントになります。

子供がみんな独立してしまい、夫婦二人だけの暮らしになると、これまで住んでいた住居が広すぎて侘しさを感じることもあるでしょう。多少手狭になっても、交通機関や生活環境が整っている都心部への住みかえを選択する人もいます。病院が近くにあり、買い物にも便利で、老後の暮らしを支えてくれる住環境に魅力を感じることは多いでしょう。

一方で、都会の喧騒から離れて、郊外でのんびり暮らしたいと考えるケースもあります。郊外なら車の騒音や人混みなどの煩わしさから解放され、自然豊かで空気がおいしく、散歩も楽しめるので、健康維持に役立つというメリットもあります。また、土地代が安いため、開放的な居住空間を手に入れられやすいでしょう。

家族との距離をどうするか

老後の住みかえを検討する際、子供や親との距離についても考慮しておくべきです。

例えば、「自分や家族が病気になったときのために、なるべく近くに住みたい」「困ったときすぐに駆けつけたい」「孫の近くに住居を構えたい」といった希望もあるでしょう。

家族との距離を近く保つためには、「二世帯住宅などで家族と同居する」あるいは、「家族が住む家の近くに住みかえる」という2つの方法があります。

同居の場合は、家族と密にコミュニケーションがとりやすいため、急に体調を崩したときにも安心できます。ただ、プライバシーの面ではお互いに窮屈な思いをすることも。家族間で十分に話し合いをする必要があるでしょう。

逆に、家族と食事や入浴など生活リズムが合わなかったり、ストレスがたまったりといった問題を避けるため、近居の選択をする人も増えています。

近居なら、自分の生活に干渉されることがなく、用事があるときには、お互いに行き来しやすいというメリットがあります。近頃は、同じマンションの別の部屋に、住みかえる人も増えているようです。

予算

住宅ローンを組むときの注意点

住宅の購入後は、固定資産税や火災・地震保険料、市街化区域内の物件であれば都市計画税がかかります。さらにマンションの場合は、管理費や修繕積立金、駐車場代など毎月支払う費用があります。戸建ての場合は、修繕費なども考えておく必要があるでしょう。

また、退職後に年金収入だけでローンを返済するのは無理があるため、退職金で繰上げ返済をすることも考慮しましょう。変動金利で現役のうちに貯蓄を増やす方法や、親子リレー返済もおすすめです。

リバースモーゲージ型住宅ローンとは

自宅を担保にして、金融機関から融資を受ける制度「リバースモーゲージ」の仕組みを利用した住宅ローンです。老後の資金を借り、死後に住宅を売却して一括返済をする仕組みになっており、毎月の支払いは利息のみで老後資金として活用できます。ただし、団体信用生命保険の対象外であったり、金利変動のリスクがあったりといったデメリットもあります。

現地見学時にチェックすべきポイントは?

物件の購入を決める前に、実際に現地で物件を見ることが肝心です。その際には、バリアフリー化されているか、周辺道路は歩きやすいか、駅や公共施設からの距離はどれくらいか、病院や老人向け施設、行政サービスは充実しているか、徒歩圏内にスーパーなどの商業施設はあるといった点をチェックします。静かな環境へ住みかえる場合は、緑地や公園への距離も大切なポイントとなるでしょう。