女性の平均寿命は87歳とされる時代。定年を60歳と考えた場合、その後の20~30年の生活を考えると、自分の年金と貯蓄で生活をまかなえるのか不安になる方も多いのではないでしょうか。
定年の延長や再雇用制度を導入する企業も増えつつあり、いつまで働くのかの判断に悩む方も多いでしょう。ここでは、定年制の状況や定年年齢などから、女性の働き方を考えてみましょう。
ひと昔前までは55歳を定年としていましたが、1986年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正。60歳を定年とするよう努力義務化され、さらに1994年の改正では、60歳未満の定年制が禁止となりました。1998年に改正案が施行されてからは、60歳定年がスタート。以降も「高年齢者雇用安定法」の改正を繰り返し、2012年に「原則希望者全員の65歳までの雇用を義務化」されたことに伴い、現在は働きたいと希望する方は、65歳まで働ける環境が整っています。
いつまで働けるかは、自分の会社が何歳を定年としているか、再雇用制度はあるかなどによって変わってきます。
また、中小企業の中には、定年制を定めていないところも存在します。
厚生労働省の「平成29年 就労条件総合調査 結果の概況」をみると、定年制を定めている企業は、平均95.5%。定年制を定めていない企業は平均4.5%となっており、このうち従業員が30〜99人の企業では、5.8%。100〜299人の企業は2.0%。1000人以上の企業では0.7%となっています。
定年年齢の状況をみると、60歳を定年とする企業が最も多く、79.3%。65歳を定年とする企業は16.4%に留まっています。従業員数が1000人以上の大規模企業では、60歳定年が90.6%と高くなっており、65歳定年は6.7%です。一方、30〜99人の企業の65歳定年は18.8%、100〜299人の企業では11.8%となっています。
企業の規模の大きさで若干の動きはあるものの、60歳を定年とする企業の割合が、とても多いことがわかります。ただ前年に比べると、定年制を65歳と定めている企業は増加傾向にあります。
65歳を定年とする企業が増えているとはいえ、定年制を導入している企業の約80%は60歳定年です。現状での平均の定年年齢は60歳ということになりますが、65歳定年を取り入れている大手企業も増えています。
なお、国家公務員についても、60歳定年から65歳定年への引き上げが行われる予定でしたが、政府の諸事情によって見送りとなりました。
政府は、高齢者が70歳まで働ける環境を整えるべく、「高年齢者雇用安定法」の改正案を2020年の通常国会で提出する予定です。これにより、65歳を定年とする流れが強まるかもしれません。将来的には、70歳定年または定年制がなくなる可能性もあるのかもしれません。
国立社会保障・人口問題研究所が行った「第15回出生動向基本調査」をみると、結婚後も仕事を継続する女性の割合は、約70%。このうち、第1子の出産後に退職をしている女性は、約半数という結果になっています。子育てと仕事の両立が難しいと判断し、出産を機に退職する方は多いようです。退職した場合のその後の働き方は、社会復帰はせず専業主婦を選ぶ方や、子供が小学校へ上がると同時に再就職したり、パートやアルバイトを始めたりする方などさまざま。その一方で、いつまで働くのか悩む方も多いようです。退職せずに出産後、仕事に復帰する方も同様に、いつまで働くのかの決断ができずにいるケースが多くなっています。
いつまで働くかを決めるには、老後の生活にいくら必要かなど、見通しを立てることが大切です。
引用元:国立社会保障・人口問題研究所 第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)
サラリーマンの場合は、定年の延長や継続雇用制度が整ってきて、65歳まで働く方も多くなっています。
総務省が行った平成29年の「労働力調査年報」によると、60〜64歳の女性の就業率は、2007年から2017年までの10年間で、12%以上増加。60〜64歳の女性の約半数が仕事を継続しており、65〜69歳で3割以上、70〜74歳で2割弱の方が働いています。さらに75歳以上でも、5.8%の方が働いている結果に。
内閣府の「平成26年高齢者の日常生活に関する意識調査」によると、何歳まで収入を伴う仕事をしたいかという問いに対し、「働けるうちはいつまでも」と答えた方は42%と最も多く、次に「70歳くらいまで」と答えた方が、21.9%。続いて「65歳くらいまで」が13.5%。「75歳くらいまで」が11.4%という結果になっています。また、80歳まで働きたいと答えた方が4.4%おり、定年後も働き続けたいと考えているシニア世代が多い傾向が見えてきました。
60歳から64歳までの女性の約半数が働いている現状を踏まえ、少なくとも65歳までは働くことを視野に入れて、人生設計を考えることが大切といえます。
引用元:内閣府 平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果(全体版)
定年後に継続して働くことがあたりまえになりつつある現代。60代以上の女性が働き続ける理由としては、「仕事が楽しい」「人と接したい」「年金だけでは心許ない」「まだ老け込みたくない」などがあげられます。
では、実際に働いている60代以上の方は、どのような働き方を選んでいるのでしょうか。
働ける限り長く働きたいと答える60代女性が、半数以上存在することがわかっています。実際に10%以上の方は、シニア世代になっても仕事を続けています。
60代の女性で最も多い雇用形態は、パートやアルバイトです。平均勤務日数は、週4日程度。平均勤務時間は、1日6時間程度です。
ただ、どのような仕事を選ぶかによって勤務時間は変わります。例えば、会社員や公務員として働く場合は、1日8時間。パートやアルバイトでは5時間、フリーランスや自営業では4時間程度が一般的です。
シニア世代で仕事を続ける方は、収入の多さよりも、社会や人とのつながりを重視する方が多くなっています。そのため、パートやアルバイトという雇用形態を選択する方が多いようです。
高齢化社会が進み、2025年には高齢化率が30%を超えるという見方もあり、年金制度などの保証制度も変化していく可能性も十分考えられます。人生100年とはいかないまでも、長く働いて生きることを意識して、人生設計をし直す必要があります。
いつまで働くか決められない方は、「74歳」を一つの目標としてみるのも良いでしょう。
74歳という年齢は、女性の健康寿命であり、健康上に問題がなければ、日常生活を制限することなくエンジョイできる期間です。つまり、一人暮らしでも不便なく普段の生活が送れる期間を指します。74歳まで働くことを意識して人生設計を立て直すことで、自分のキャリアに対する視点も変わってくるでしょう。
定年後は旅行や趣味を楽しんで、悠々自適な生活を送りたいと考える方も多いですが、そういった生活には緊張感がなく、数年経つと飽きてしまうことも。
生活にメリハリをつけ、達成感や充実感を味わいたいがために、また仕事を再開する方もいます。
70歳以上になっても働く女性が増加傾向にある今、従来の考え方に縛られず、自由に自分の「定年後の働き方」を考えるのが良いでしょう。
会社に勤めていても、女性の年金受給金額は男性より低くなります。これは女性の生涯年収が、男性よりも低いことに比例します。ところが、男性よりも女性の方が平均寿命は長く、老後にかかる費用に鑑みた場合、男性より多くの費用を確保する必要があることが安易に予想できます。
また、65歳以上で配偶者がいない方の割合も、女性が約5割、男性が約2割と女性の方が多くなっています。つまり、女性は既婚・独身に限らず、老後の生活費を一人でやりくりしなければならない可能性が高いのです。
老後の収入源を確保するためには、雇用形態にこだわらず、仕事を続けることが大切だと言えます。収入を確保するために、スキルアップも考慮すると良いでしょう。
現在、仕事をしている方は継続することで、70歳を過ぎても雇ってもらえる可能性は高まります。子育てが終わったら共働きにするなど、仕事ができる環境になるべく身を置くようにしましょう。