若いころしっかりと人生を謳歌したから、老後は質素な生活でもいい。そう考えて資産を使い尽くしてしまうと、待っているのは介護費用と葬儀費用の問題です。
平成27年度の調査データとして、生命保険文化センターが公表している「生命保険に関する全国実態調査」の中には介護に関する平均値があります。
引用元:生命保険文化センター 平成27年度「生命保険に関する全国実態調査」
一時出費が80万円、月額で8万円弱という金額は老後の生活費と比較してもかなりインパクトの大きいものです。
若いころは自分が介護を受けるような状況になることをなかなかイメージできないとは思います。それでも、平均寿命が延びるほど要介護になる人の絶対数は増える傾向があり、さらに女性は理想的な死に方とも言われる「ピンピンコロリ」が男性に比べて少ないというデータもあります。
健康寿命が重視されることからもわかるように、介護費用はけして特別な出費ではなく、一方で予測しづらいタイミングで、ある時に発生する大きな出費といえます。
介護にかかる費用は介護保険でカバーできるケースもありますが、適用外のサービスを受けることになれば、それは全額自己負担となります。どのくらいの費用がかかるのかはケースバイケースなので一概にいえませんが、参考となるデータとして覚えておくべきです。
老人ホームは、大きく分けて「公共の施設」と「民間運営の有料老人ホーム」の2つに分けられます。それぞれ目的と対象者が異なるので、実際に老人ホームの利用を検討する段階で、自分のニーズに合った老人ホームを選ぶことが大切。そこで、ここでは、各老人ホームの特徴、具体的に必要な資金についてまとめました。老後のことも見据えて参考にしてみてください。
公共の介護保険施設系の老人ホームは、民間の老人ホームと比べて必要な資金が安いのがメリット。基本的に、病気や障害などで自宅での生活が困難な要介護者を対象としているので、誰でも入居できるわけではありません。介護度が重い、常時医療的ケアが必要、といった要介護者が優先されます。人生の終盤に利用することになる施設、と考えておきましょう。
特別養護老人ホームは、「特養」とも呼ばれる、日常的な食事や入浴といった生活サポートがメインの介護施設です。寝たきりや認知症、その他病気や障害などによって自宅での生活が困難な人を対象としています。そのため、機能訓練や医療的ケアはあまり提供されないので注意です。
介護老人保健施設は、入居者が在宅復帰することを目的とした公共施設です。入居期間が定められており、原則3~6ヵ月の期間限定となっています。しかし、リハビリが進まず在宅復帰できない、家族側の受け入れ準備ができていない等の理由によって、期間内で復帰できない場合もあります。理学療法士や作業療法士などによる機能訓練が充実している、手厚い医療ケア・処置にも対応している点が特徴です。
介護療養型医療施設は、リハビリや手厚い医療ケアなど医療面でのサポートが充実している介護施設です。主な対象は、医療ケアが常時必要な人や寝たきりの人などの要介護者。医師が常駐しているだけでなく、病院と併設されていることも多いので、医療的なケアや処置が不可欠な人にとって非常にメリットの大きい施設です。
民間の有料老人ホームは、自立して生活できる比較的元気な高齢者から要介護者まで幅広く対象としています。
しかし、提供するサービスとしては、食事や生活支援、軽度な介護サービスや機能訓練などがメインなので、重度の介護や医療ケアが必要な高齢者は入居が難しい場合があります。必要な介護が軽度な人か、ある程度自力で生活できる人に最適です。
介護付き有料老人ホームは、入居者の状態に合わせて食事や生活支援のサービス、介護サービス、機能訓練、レクリエーションやイベントなど、様々なサービスを提供しています。
特定施設入居者生活介護の指定を受けている有料老人ホームなので、施設常駐のスタッフによる介護サービスが受けられます。基本的には、介護が必要な人向けの施設です。
自立している人から要支援・要介護者まで幅広く入居できるのが、住宅型有料老人ホームです。比較的元気な人向けの施設なので生活支援や健康管理などのサービスが中心ですが、介護の必要性が生じても、外部の介護事業者による介護サービスが利用できるので、長く入居する人にとって安心感の大きい老人ホームと言えます。
自立・混合型有料老人ホームは、自立できるアクティブなシニア層から要支援・要介護の人まで幅広く入居可能な老人ホームです。共同生活を楽しむための設備やレクリエーションがあり、介護サービスも受けることができます。
グループホームは、認知症の症状があり病気や障害等で生活が困難な高齢者が、専門スタッフのサポートを受けながらグループで共同生活する介護福祉施設です。軽度の認知症高齢者向け、という位置付けになります。
サービス付き高齢者向け住宅は、自立できる60歳以上の高齢者・比較的元気な高齢者を対象としています。そのため、介護サービスの提供はありません。
一方で、自由度が高いというメリットがあります。建物全体がバリアフリー化されており、病院への送迎や買い物の代行といったサービスも受けられるので、不自由のない環境と言えるでしょう。
老人ホームを探されている方の中には、「元気なうちに入居しておきたい」と考える人も少なくありません。しかし一般的な老人ホームは介護が必要な方が入居できるイメージ。介護不要の元気な人も入居できる老人ホームがあるのでしょうか?
ここでは、元気な人でも入居できる老人ホームがあるのか、まだまだ介護が不要の元気な方たちに役立つ情報を紹介しています。
近年の老人ホームには、企業勤めしている現役の会社員の方も入居していて、介護認定を受けていない自立した人も多くいらっしゃいます。施設では季節のイベントなどが盛んに行われ、行事を通じて入居者と仲良くなれたり、新しい趣味を見つけたりと忙しい日々を満喫している方も多いようです。
また日本は、地震や台風などの自然災害が多い国でもあります。老人ホームに入っていれば、本人はもちろんご家族も安心できるというのが大きなメリットです。
介護認定を受けていなくても、以下の老人ホームに入居することが可能です。
上記でも紹介していますが、施設によって特徴やサービスが異なります。費用も含め家族と話し合いながら、あなたに合った老人ホームを探しましょう。
家族と同居していない独り身の方は、できるだけ早めに知識を習得しておきましょう。
老人ホームの種類は非常に多いため、要点を押さえておかなくては施設選びに失敗してしまいます。あなたに合った老人ホームを見極めるには、以下の5つの条件を事前に決めておきましょう。
それぞれについて詳しく解説します。
住み慣れた町に近いエリアの場合は、知り合いや親戚が入居してくる可能性も高く、また家族も来訪しやすいというメリットがあります。万が一のために大きな病院が近い方が安心という方もいるでしょう。
まず大切なのが衛生面です。感染症対策や食事などの衛生管理状況をチェックしましょう。また買い物代行などの生活支援や、介護サービスの内容についても、入居前に確認しておくことが大切です。
年金や貯金、保険などの収入を計算して、90歳までは安定して生活できる資金計画を立てましょう。
元気であれば、積極的にイベントやサークルに参加したいものです。興味が持てるようなイベントがあるか、活動の頻度も含めて確認してみましょう。
老人ホームは基本的に医療行為が禁止されています。持病を抱えている人はとくに、万が一のときにどんな対応をしてくれるのか、近くにある医療機関や連携体制についても確認しておく必要があります。
葬儀費用は全ての人がいつの日か必要となるコスト。宗派などによる違いはありますが、一般的な仏式を想定して、どのくらいの費用がかかるか参考になるデータがあります。日本消費者協会の公表している2017年の調査アンケートです。
とはいえ、こちらはサンプル数が少ないといったことが指摘されており、ある葬儀社さんでは「うちの前年平均は65万でしたので、ご安心を」なんて書いている方もいらっしゃいました。
引用元:全日本葬祭業協同組合連合会 「葬儀業界の現状」【PDF】
頼る親族がいなくて、自身の死後の葬儀や納骨をどうするかで悩まれる方が多いですが、生前に自分がどうしてほしいかを決めておく「生前契約」がお勧めです。
ある葬儀社では、身寄りのない人向けに、喪主がいなくても葬儀から納骨までをしてくれる「生前契約プラン」があります。払い込んだお金は、信託銀行と弁護士が管理してくれるのも、安心できます。
また、葬儀や納骨だけでなく、行政や金融機関などの事務手続きまでしてくれる「死後事務委任契約」という制度もあります。あらかじめ必要なお金を預託し、死後に手続きを執行してもらうので、信頼できる行政書士や司法書士などの専門家に任せることが大切です。
日常的な生活費とは別に老後の費用として必ず用意しておく出費の、代表的なものが介護費用や葬儀費用。ですがこの2つに退職金を充てようと考えているのであれば、気を付けた方がいいでしょう。退職金について、知っておくべきポイントを紹介します。
日常的な生活費とは別に老後の費用として必ず用意しておく出費の、代表的なものが介護費用や葬儀費用。ですがこの2つに退職金を充てようと考えているのであれば、気を付けた方がいいでしょう。退職金について、知っておくべきポイントを紹介します。
会社員の多くが老後資金として充てにしている退職金。普通の会社員にとってはもっとも大きな金額を手にすることができますが、これにも税金はかかります。給与の時と違うのは退職所得控除があること。
退職金を受け取る勤続年数で変わってきますが、30年勤務なら1,500万円が控除となり、控除額を除いた退職金が所得税の対象となります。また、その額に対して、10%の住民税がかかることも覚えておいてください。
まず、60歳で退職して、年金が受け取りできるだろう65歳までの生活費が毎月20万だとすれば、この5年間で約1,200万円必要になります。
定年後に働かないとすれば、この金額分の貯蓄を取り崩していくことになるため、リスクは伴いますが、資産運用も選択肢にいれておくのはよいでしょう。
一方で、働くことを選ぶなら、給料は減ることを覚悟して、65歳まで再雇用制度を利用するのも1つです。または、現役時代とは全く違う分野で新たなキャリアを築くのも、新鮮かもしれません。
現在2児の母。出産前までは大手証券会社で長年営業に従事。自営業の夫の仕事を手伝う傍ら、自身の経験を活かし、ウェブライターとして活動中。わかりやすいをモットーに、さまざまな場面でのお金について解説します。
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