「今を楽しめれば老後はそれなりの生活でいい」と考えているおひとりさまでも、将来誰にも気づかれず孤独死してしまうのは避けたいはず。生活保護を受けてそれなりの老後が送れるように、受給条件を確認しておきましょう。
生活保護受給者ができること・できないことについても紹介しています。
ここ数年、生活保護受給者数は横ばいですが、65歳以上の高齢者の受給割合は年々増加していて、全体の45.5%を占めています。この傾向から、「老後は生活保護を受ければ何とかなる」と思っている人もいるのでは?
しかし、生活保護は万人が受けられるものではありません。いくつかの受給条件があるので、内容を確認しておきましょう。
受給条件の詳細は地域によって多少異なるため注意が必要です。
とはいえ、この基準は全ての年代に当てはまります。老後の生活保護受給については若い年代よりもケースワーカーの判断が甘い傾向にあります。確実に必要な条件は1つめの世帯収入と生活基準額についてのみ。ここが条件に達しているか否かで、生活保護が受給できるかは決まるといっても過言ではありません。
その際のポイントになってくるのはやはり年金。世帯全体で受ける国民年金・厚生年金の合計金額が生活基準額に達していない場合のみ、生活保護を受給できます。生活保護を受けるつもりが、うっかり年金が受給できる状態になっており、結局年金生活になってしまった…ということがないよう、日本年金機構(ねんきんネット)に問い合わせてくださいね。
(生活扶助1類+生活扶助2類)×世帯人数による逓減率+住宅扶助=生活基準値
生活扶助1類とは年齢による生活費の基準です。食費や衣類代など、世帯に所属する各個人の出費が対象となります。対して生活扶助2類は世帯人数による生活費のこと。電気代・ガス代・水道代といった、いわゆる光熱費がこれに当たります。
住宅扶助は生活地域と考えて間違いありません。これは日本国内のどのエリアで生活を送るかによって変わる生活費を計算に含むということ。全ての市町村が1級地-1~3級地-2まで6つの階級に分かれています。
次に国民年金・厚生年金について考えましょう。受給資格の最低ラインはどちらも10年(120ヵ月)年金を支払っているか否かです。例え119ヵ月支払っていたとしても、1ヵ月の不足があれば受給資格はありません。
国民年金は日本国民ならば誰もが加入している年金、厚生年金は会社勤めを行っていた場合に加入する年金です。それぞれ自動で加入されている可能性が高いため、日本年金機構への確認が必要です。厚生年金を支払っていた場合、同時に国民年金も支払っている可能性が高いため、注意してください。
もしも受給資格がある場合は、その受給金額を計算しましょう。
※令和元年度年金額 781,000円
※厚生年金を40年間支払った場合の平均値
一例として杉並区の基準額を元に説明します。60代夫婦の生活基準額は約19万円、夫婦の年金受給額の平均は22万円。これを踏まえると、条件はそれなりにシビアであると言えます。
生活保護を受給すると、ケースワーカーによる家庭訪問が年2~12回ほど実施されます。ケースワーカーが家庭訪問で確認するのは「保護費を不正受給していないか」「求職活動を行っているか」など。そのため、受給者は以下のことができなくなります。
生活保護の受給条件の1つに「換金できる資産は売却する」という内容があります。つまり、土地不動産・自動車・宝石・株式などを売却せずに所有していると「不正受給」と見なされる可能性が。中でも自動車は、維持費の高さと事故による賠償金のリスクから「所有」と「借用」の両方が禁止されています。
「換金できる資産」と同様に、生活費に充てられる可能性があるものは全て手放さなければいけません。一部の保険料が返却される保険に加入しているなら、解約して生活費に充てることが求められます。借金はチャラにできません。整理するには、自己破産や住宅売却などの手段が用いられます。
生活保護者が医療機関を受診する際に必要な「医療券」は、発行されるまでに手間がかかります。発行された医療券には病院名が記載されるため、受診したい医療機関の数だけ福祉事務所へ申請が必要。また、医療券を発行できるのは生活保護指定の医療機関に限られます。指定外医療機関の受診は自費となることを覚えておいてください。
生活保護受給者には、ケースワーカーによる就労指導が入ります。65歳以上でも健康体ならハローワークに通うことになるでしょう。「この仕事をやってください」という強制的な指導はないものの、仕事に対する意識をつつかれるので、心休まる老後とは言い難い生活になります。
意外と知られていない「生活保護中にできること」をご紹介。基本的に、生活保護を受けると制限が増えますが、条件によってはできることも多いんですよ。
生活保護の申請時に認められている保有額は、生活基準額の半額まで。そのため「生活保護者は貯金できない」というイメージが根付いていますが、過去には80万円の貯金が認められた受給者もいます。貯金したい人は、ケースワーカーに「◎◎の目的で貯蓄します」と申告してください。OKかどうかを決めるのはケースワーカー。貯金する目的と貯金額によって判断されます。
ちなみに、隠れて貯金する行為は保護費の支給がストップする恐れもある高リスク行為。発覚した時点で保護費の返金が求められるので、止めておくのが賢い選択です。
生活保護費は常識の範囲内であれば趣味に使ってもOK。ただし、生活保護の目的から大きく逸れた使い道は認められないため注意が必要です。病気で働けない受給者を例にすると、「息抜きとしてパチンコするくらいなら問題なし。ただし、毎日パチンコに行く元気があるなら働いてください」ということです。ちなみに、ギャンブル自体は可能ですが、得たお金は収入として申告する必要があります。
生活保護受給中でも旅行はできます。意外かもしれませんが、前もって目的と日程さえケースワーカーに報告していれば、国内旅行・国外旅行どちらもOKです。とはいえ、多額の貯金ができない受給者が旅費を捻出するのは難しいもの。生活保護受給者でありながら旅行を繰り返せば、周りから「不正受給してるんじゃないか」と白い目で見られるとみて間違いないでしょう。
「できること」というよりは「強制引っ越し」となるケースがほとんど。引っ越し指導の対象は、地域によって定められている「家賃の基準額」を超えている生活保護受給者です。引っ越し先は今よりも家賃の低い家となりますが、転居費用を支給してもらえる利点が。また、介護・治療目的で医療機関や扶養義務者の近隣へ引っ越すこともOKとされています。
貯金せずに今を思いっきり楽しんでいるキリギリス型でも、老後に生活保護を受ければそれなりの余生を過ごせます。生活保護の条件を詳しく把握していれば、多少の娯楽も味わえるでしょう。
ただし、生活保護を頼るとお金の収支は全て監視され、65歳を過ぎてもなお「就労指導」を受け続ける生活が待っていることを頭に入れておきましょう。
現在2児の母。出産前までは大手証券会社で長年営業に従事。自営業の夫の仕事を手伝う傍ら、自身の経験を活かし、ウェブライターとして活動中。わかりやすいをモットーに、さまざまな場面でのお金について解説します。
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