退職金は多くの人にとって、これまでで一番大きなお金を受け取ることになります。大金を手に、「どう使えばいいのか」「どのように管理すると安全なのか」、悩みを抱える方も多いでしょう。
ここでは、退職金の使い方で失敗するケースと、老後の支出について解説しています。もうすぐ退職金が入るという人は、退職金の正しい使い道について知識を身につけておきましょう。
平成30年に厚生労働省が調査したデータによると、勤続20年以上で、なおかつ45歳以上で退職した人の退職金はご覧のとおりです。
これだけ退職金を貰えば老後も安心なのでしょうか?老後にかかる生活費と比較してみましょう。
65歳から受け取れる年金受給額の平均はこちらです。
総務省の調査によると、高齢者の夫婦2人の生活費は毎月23.5万円ほどかかっているようです。この内訳には住居費が1.3万円しか入っていないことから、持ち家でローンは完済しているとみなしましょう。マンションに住んでいる場合は管理費などが上乗せになるイメージをしてください。
仮に会社員の夫と専業主婦2人の暮らしだった場合では、収入は20.1万円です。最低限の日常を送るにしても、毎月3万円ほどの赤字になってしまいます。85歳まで生きると想定しても、720万円が足りない計算になります。
3万円×12ヶ月×20年=720万円
このマイナス分を退職金から埋めることになりますが、老人ホームのような施設に入居する場合も想定しておく必要があります。
参照元:厚生労働省 「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106808_1.html
退職金は大金ですから、思わず使ってしまいたくなる気持ちは分かります。しかしこれから人生100年時代を迎える私たちは、長い老後生活を送るために、退職金の使い方には注意しなくてはなりません。退職金を無駄遣いしないためにも、やってはいけない退職金の使い方を頭に入れておきましょう。
退職金が入ると、運用して増やそうと考える人も多いと思います。しかし知識がないまま金融機関に勧められた商品を買ってしまうと、せっかくの退職金を失ってしまうかもしれません。
銀行に預けていても年利は雀の涙。しかしリスクはないのでお金が減ることもありませんよね。投資が決して悪いというわけではなく、始める場合は運用期間を長めに設け、金額も無理のないところからスタートするようにしましょう。リスクを分散しておくことも重要です。
定年を迎え退職すると時間ができるので、子どもや孫と過ごす時間も増えてきます。すると財布の紐が緩み、おもちゃを買ってあげたり、外食に連れて行ったりする機会が増える人も多いようです。とくに遠方に住んでいて滅多に会えない場合は、お盆やお正月の帰省の際に、ここぞとばかりに孫に貢いでしまいがち。ランドセルが1番売れるのは、お盆の8月というのも納得です。
子どもや孫にお金を使い過ぎて、いざというときに「施設に入るお金がない」「入院費用が高くついて払えない」ということにならないよう気を付けましょう。
退職して自宅を改装しようとする人も少なくありません。子どもも自立し、夫婦2人が使いやすい間取りに変えようとして、散財してしまうケースもあるようです。ついつい「あれもこれも」と、当初の計画以上にリフォームしてしまうと、予算を何百万もオーバーしかねません。スーパーでは野菜の数十円の違いに悩む人も、数百万単位の大きな金額になると感覚が麻痺しがちです。
定年後は出来るだけ金を使わず、節約した生活をしなくてはならないのでしょうか?切り詰めた生活ではなく、ときには趣味や楽しみにお金を使いたいという人は、定年後に起こりうる支出を把握しておきましょう。
定年後の支出は大きく3つに分かれます。
最低限の生活をしていくには、家賃・食費・光熱費・通信費・交際費などがかかります。住宅ローンを完済されている方でも、マンションなら管理費や修繕積立費がかかりますし、賃貸の場合は家賃を払い続けなくてはなりません。家賃の支払いで生活が苦しくならないよう、老後20〜30年にかかる総家賃を計算しておきましょう。
老後20年、30年生きるなら、住宅リフォームや旅行、自動車の買い替えなども必要です。また孫の入学祝いや子どもへの相続などもこちらに該当します。ここは出来るだけ出費を抑えておきたい項目ですが、長年働いてきたご褒美にと財布の紐が緩くなりがちです。
事前に予測がつかないのが、医療や介護の費用です。これまで健康が自慢だった人も、70歳を過ぎるとあちこちに不具合が出てきます。毎週の通院が必要になる人もいるでしょう。また老人ホームなどに入居する際も、施設によって費用はまちまち。出来るだけゆとりを持って残しておきたい分野です。
退職金はこれまで頑張ったご褒美と捉えずに、これから安定した生活を送るための「保険」と考えておきましょう。80歳まで生きるか、100歳まで生きるか、それ以上かは誰にも分かりません。
万が一や一時的な出費に備え、大切に管理するよう心がけましょう。