年金生活の実態

楽しい老後を夢見て40年近く働き続け、年金を支払い続ける多くの日本人。年金制度の限界が騒がれつつも、何とかなるだろうと甘く考えていると、20年後には生活保護よりも貧しい生活を送っている可能性があります。 実際に年金が置かれている状況はどうか、そしてどの程度の生活費が必要になるのか、今すぐにでも考えていくべき時代が来ています。

老後の年金は
どの程度支払われる?

年金手帳

2019年度の国民年金受給額ですが、前年度から0.1%上がり、67歳以下で新規裁定者の平均を見ると月額65,008円、年額780,096円となっています。

一方、厚生年金ではおひとりさまだと、月額156,496円で年額1,877,952円、夫婦2人分の標準的老齢基礎年金込みの月額が221,504円で年額2,658,048円。1人分に割ってみると月額110,752円、年額1,329,024円となっています。もちろん実際の年金受給額は個人により異なります。

ちなみに、厚生年金は、平均的収入42.8万円(平均標準報酬・賞与含む月額換算)で40年間働き、妻がその期間すべて専業主婦だった場合の給付水準で計算しています。

国民年金と厚生年金
それぞれの計算方法

  • 国民年金受給額=年間の基礎年金受給額×加入月数÷480(40年)
  • 厚生年金受給額=平均月給(〜2003年3月、除く賞与)×900×加入年数(〜2003年3月)+平均月収(年収÷12)×660×加入年数(2003年4月〜)

国民年金は加入期間によっての変動となり、厚生年金は収入や加入時期によって変動するためあくまで参考レベルと思ってください。厚生年金は2003年4月以降、賞与込みの年収で計算する総報酬制となっている点にも注意してください。

なお、ねんきん定期便は過去の年金加入記録が記載されていて、毎年本人の誕生月に送付されます。

年金だけでは
到底賄えない老後資金

上で紹介したように、2019年時点でも公的年金支給額は、今の日本で生活するのに十分ではありません。特に退職金がない場合、リタイアするまでにかなりの資産を持っていないと、満足のいく老後は過ごせないということ。

そして、より深く考えるべきは日本全体の問題である後期高齢化の社会。平均寿命が延びているため、老後生活の期間は長くなる可能性が高いということ。

公的年金に多少の上積みとなる資産があったとしてもカツカツの生活を20~30年にわたって過ごすのは耐えがたいのではないでしょうか。

問題その1:少子高齢化による
年金額の調整

子育て環境を整えるべく官民あげて取り組んではいるものの、そうそう短期間で少子化問題が解決されるわけではありません。年金額の調整は、2016年からマクロ経済スライドで行われており、緩やかではあるものの、年金の給付水準の調整は進んでいます。

2014年からは団塊世代が年金受給年齢になっていることもあり、2016年では2.2人の現役世代が1人の高齢者を支えていて、これが2065年になると1.3人で1人を支えると予測されているほど。増え続ける社会保障費の財源確保のために、消費税が10%になりましたが、年金制度のさらなる見直しは出てくるでしょう。

問題その2:少子高齢化による
年金支給年齢の変更

上で紹介した現役世代とは15〜64歳の生産年齢人口で、高齢者は65歳以上と設定されています。高齢者の内訳を見ると、2020年以降は75歳以上の後期高齢者が65〜74歳の前期高齢者を上回ってきます。現在70歳まで年金の繰り下げ受給ができますが、さらなる受給年齢の引き上げの可能性も頭においておきましょう。

問題その3:介護保険自己負担増加

介護保険は40歳から強制的に保険料を支払うことになります。老後にサービスを受ける際、要介護認定別に利用限度額があり、当初は自己負担割合が原則1割でしたが、現在では原則1割負担・一定以上の所得がある人は、2割または3割負担になっています。また、利用限度額を超えてサービスを受けることもできますが、その場合は全額自己負担になります。

問題その4:高額療養費の
自己負担額増加

「高額療養費制度」とは、同一月にかかった医療費が高額になった場合でも、一定の金額を超えた分はあとから返してくれる制度です。

平成29年・30年に一部改正され、70歳以上75歳未満の層の自己負担限度額が引き上げられ、自己負担上限額は44,400円になりました。逆に、どれほど高額な医療がかかったとしても、1か月44,400円しか必要ないのですが、老後になれば、病気にかかることも多くなります。そうなると、医療費をどうするかも考慮しておかなければなりません。

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監修:中野令子

現在2児の母。出産前までは大手証券会社で長年営業に従事。自営業の夫の仕事を手伝う傍ら、自身の経験を活かし、ウェブライターとして活動中。わかりやすいをモットーに、さまざまな場面でのお金について解説します。

保有資格
FP技能士1級、損害保険募集人、第一種証券外務員