令和元年に生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」によると、全体の84.4%が老後生活に不安を感じていることが分かりました。「不安感がある」と答えた方を性別でみると、男性が81.9%、女性は86.4%。女性のほうが老後の生活に不安を覚えやすい傾向にあるようです。
老後生活に不安を感じる理由には、「公的年金だけでは不十分」とする回答が82.8%と最も多く、次に「日常生活に支障が出る」が57.4%、「退職金や企業年金だけでは不十分」が38.8%と続きます。生活資金の面で不安に感じている方が大部分を占めていることが分かりました。
参照元サイト:生命保険文化センター_「老後の生活にどれくらい不安を感じている?」:(https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/5.html)
特に独身の場合は、ひとりで老後生活の全てを自分で行わなければならないため、不安を抱く人も多いのではないでしょうか。
ここでは、独身の老後のために備えておくべきことや老後にもらえる年金額について解説します。
総務省統計局が公表している「平成26年全国消費実態調査」によると、男性の単身世帯の平均貯金額は1,118万円、女性の単身世帯では1,279万円となっています。ただしこの結果はあくまでも平均値であり、一部の高額貯蓄者によって平均値が高くなっているようです。実際は6割以上の単身世帯が、平均貯金額を下回る結果に。同調査で単身世帯の貯蓄額を中央値でみると、男性は480万円、女性が679万円。貯蓄額が200万円以下の世帯は男性で30.1%、女性で24.4%であり、貯蓄額が1,500万円以上の世帯は、男性が22.8%、女性が28.5%でした。
一方で同調査の高齢単身世帯の結果では、全体の4割以上の男女が、1,000万円以上の貯蓄をしていることが分かっています。
参照元サイト:[PDF]平成26年全国消費実態調査 単身世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果 結果の概要:(https://www.stat.go.jp/data/zensho/2014/pdf/gaiyo2.pdf)
老後に受給できる年金額と老後に必要な生活費を事前に計算しておくことで、定年までにいくら貯蓄すれば良いかが分かります。
厚生年金の場合、65歳以上の全体の平均受給額は月14万3,761円。男性の場合で月17万2,742円、女性では10万8,756円となっています。一方、国民年金の場合は、男性で月5万8,775円、女性で月5万3,342円。全体では月5万5,708円が平均値です。男性に比べて女性は受け取れる年金額が低くなるため、老後資金もより多く準備しておく必要があるでしょう。
参照元サイト:厚生労働省_平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況[PDF]:(https://www.mhlw.go.jp/content/000578278.pdf)
総務省の2019年の家計調査によると、高齢の単身世帯が1ヶ月に使う食料や住居、水道光熱費、医療、娯楽などの生活費は平均13万9,739円。これに社会保険料や税金などを足すと、月15万円ほどになります。
老後のライフスタイルはそれぞれ異なるため、個々に必要な生活費も変わってくるでしょう。単身で賃貸住宅に住んでいる場合は、特に老後の住居費について考えておく必要があります。というのも、月々の平均支出額は、持ち家の場合で調査されたものであり、住居費1万2,916円で計算されています。賃貸住宅の場合は、どこの地域に住む場合でも月1万円程度で借りられる物件はほとんど無いでしょう。老後も賃貸住宅に住み続けるのであれば、月々の家賃を加算して必要な額を計算しなければなりません。
参照元サイト:総務省統計局_家計収支編_2019年[PDF]:(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2019.pdf)
老後にかかる生活費を月15万円とし、65歳で定年後20年生活すると仮定した場合、必要な資金額を単純に計算すると「15万円×12ヶ月×20年=3,600万円」となります。
年金の平均受給額で計算すると、厚生年金の場合、20年で受け取れる年金額は約3,450万円。この額から生活費を引くと、「3,600万円-約3,450万円=約-150万円」の赤字となります。
国民年金の場合、20年でもらえる年金額は約1,340万円。同様に計算すると「3,600万円-約1340万円=約-2,260万円」の赤字です。
賃貸住宅に住んでいる方は月々の家賃を含めるため、出た赤字額よりも増えます。したがって、定年後20年よりさらに長生きする場合は、赤字がふくらむことになるでしょう。明るい老後生活を送るためには、早い段階から計画的に老後資金を準備しておく必要があります。
家族がいる場合は、配偶者や子供に身元保証人になってもらえますが、独身の場合は身元保証人を探すのも大変なケースは多いです。親戚や兄弟姉妹がいる場合は、連絡をとって身元保証人になってもらえるよう頼んでおくと良いでしょう。身元保証が必要な口座の開設や保険契約などは、できるだけ若いうちに済ませておくことが大切です。
親戚や兄弟などがいない場合は、自身の判断能力が低下した場合に備えて「任意後見契約」についても検討しておくと良いでしょう。
「任意後見契約」は、家族や友人、弁護士、司法書士などの専門家と、身元保証人に近い具体的な支援内容での契約を結ぶ制度。判断能力があるうちに任意後見契約を結んでおくことで、いざ認知症になったり、体調を崩したり、という状況になった際も不利な扱いを受けずに済みます。