2013年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が一部改正されて以降、希望者には65歳まで働くことが許可されるようになりました。全企業でこの法制が適用されるのは、2025年からとなっています。
この改正は、厚生年金の支給が始まる年齢が、引き上げられたことに起因します。年金の支給開始年齢が、60歳から65歳まで段階的に引き上げられることになったため、高齢者が給料も年金も受け取れない、「収入ゼロ期間」が生じることを防ぐための措置です。
高齢者の安定した雇用を確保するため、企業は「定年制の廃止」か「定年の引き上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかを導入するよう法律によって定められています。
厚生年金が受給開始となる年齢は、2013年の法改正後に61歳に引き上げられ、以降は3 年ごとに1歳ずつ、65歳まで引き上げられていきます。男性の場合、受給開始年齢が65歳に到達するのは、2025年の4月以降です。継続雇用が義務化される年齢は、この受給開始年齢の引き上げプロセスに沿って対応されるため、同様に2025年に65歳定年となります。女性の場合は、もともと受給開始年齢が5歳低く定められていた背景があるため、男性より5年遅れとなっています。
従業員の希望により、65歳までの雇用が認められる制度です。定年後に求職活動を行うのは精神的にも体力的にも辛く、億劫に感じて敬遠されがちです。そのため、同じ職場で働き続けることを選択する人は多くなっています。
2017年に厚生労働省が実施した調査によると、「希望者全員が65歳以上まで働ける企業の状況」は、上述した「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のそれぞれの選択肢で以下のような内訳となっています。
この「定年の廃止」を実施している企業は、全体の2.6%。301人以上の従業員を持つ企業では0.5%、31〜300人の従業員を抱える企業では2.8%となっています。全体的にはわずかな割合ですが、年々少しずつ増えている傾向にあります。人手不足が深刻化する中、年齢に関係なく働き続けてもらいたいと考える企業が、増えているように感じられます。
ただし、「定年の廃止」を実施する企業の多くは、人件費を抑えるため、仕事の成果に応じて賃金を支払う「成果主義」という形をとっています。
次に、「定年の引き上げ」を実施している企業は、全企業の17.0%と、こちらも増えてきてはいますが、60歳〜65歳の間でいつを定年とするかを選べる、「選択定年制度」を導入する企業も多くなっています。
「選択定年制度」は、60歳以降になると給料が減る点では、再雇用の場合と大差ないのが一般的ですが、何歳まで働くかを従業員自身が決められるため、モチベーションを維持しやすくなり、生きがいとして働けることから注目を集めています。
3つの選択肢のうち、最も多くの企業が導入している制度が、65歳まで働ける「継続雇用制度」。全体で56.0%と、約半数の企業が導入しています。
継続雇用制度の中でも、最も多く利用されているのが「再雇用制度」です。人事院が平成30年に行った調査によると、継続雇用制度を導入している企業の91%が、再雇用制度のみを利用しているということがわかっています。
再雇用制度で注意すべきは、現役時代と同じ仕事内容や勤務条件が、再雇用後も継続されるとは限らない点です。以前は正社員として雇用されていた場合でも、一度退職した後での雇用となるため、雇用形態も変わるのが一般的。多くの再雇用者は、契約社員や嘱託、パートなどの形態で働くことになります。
再雇用で非正規になると、1年ごとに契約が更新されることになったり、給料が減額されたりといったことがあります。仕事の内容が変わるだけでなく、仕事の成果に対して適正な評価が得られず、モチベーションが下がってしまうことも。再雇用制度を利用して働き続ける場合は、そうした変化を想定して、早くからキャリアプランを考えることが大切です。