海外移住すると年金はどうなる?

海外移住でも年金は受け取れる

老後に海外移住をして、暮らしたいと考えている方も多いでしょう。しかし気になるのは、長年払っていた年金保険は、海外移住をする場合でも受け取れるのかという点。

結論をいうと、海外移住前に正しい手順で手続きをすれば、日本に住んでいる場合と同様に、年金の受け取りが可能。現在、年金を受給しているかどうかによっても、手続きが変わるため注意が必要です。

すでに年金をもらっている人は

現在年金を受け取っている場合は、住んでいる市町村で「海外転出届」の提出が必要です。届出が受理されれば、海外のどこへ移住してもこれまでと同じように、日本の銀行口座に年金が入金されます。

また、海外に口座を持っている場合は、現地の通貨での受け取り可能。この場合は為替の変動に影響を受けるため、円安のときに振り込みがあると、受け取り額が減ってしまいます。ご自身の都合に合わせて、受け取る口座を決定するといいでしょう。

これから年金をもらう人は

年金受給開始の年齢に達していない場合でも、引っ越しの前に「海外転出届」を提出すれば、受給資格の維持が可能。年金を受給開始するためには、年金受給資格期間が10年以上に達した際に、自分で手続きを行う必要があります。

海外居住先には、日本移住先に送られてくる「年金請求書」送付されないため、日本年金機構の公式ホームページから、海外移住者専用の「年金請求書」をご自身でダウンロード。必要事項を記載し、日本に住んでいたときの住所管轄の年金事務所へ送り、手続きを行いましょう。

年金加入期間が10年に満たない場合

厚生年金や国民年金を受け取るためには、年金への加入期間が10年以上に達していなければなりません。加入期間が10年に満たないうちに、海外移住をしてしまうと、受給資格が無い状態になります。

ただし、「社会保障協定」を締結している国へ移住する場合は、年金加入期間が10年以下でも、移住先での加入期間と通算ができます。例えば、日本にいる間に、厚生年金あるいは国民年金へ5年間保険料を支払った場合だと、現地の年金保険に5年以上加入すれば、合計して年金加入期間が10年を満たしているため、年金の受給資格の取得が可能です。

日本と「社会保障協定」を結んでいる国は、ドイツやイギリス、アメリカ、韓国、フランス、ベルギー、カナダ、オランダ、オーストラリア、チェコ、アイルランド、スペイン、スイス、ブラジル、インド、ルクセンブルク、ハンガリー、フィリピン、中国、スロバキアです。受給資格が10年に満たない場合で、協定を結んでいる国へ移住する場合は、移住先での年金加入検討をおすすめします。

すでに海外移住をしている人の年金受け取り方法

1.年金請求手続き

年金請求に必要な書類は「年金請求書」と、戸籍謄本や住民票などの「本人確認書類」、年金の受け取り先となる「本人名義の金融機関の通帳」、「印鑑」です。本人確認書類は、年金請求書を提出する日から遡って6ヶ月以内のものであり、年金の受給資格が発生した日以降に交付されたものに限ります。また、場合によっては、配偶者や子供の「収入確認書類」などを求められることもあるようです。

年金請求手続きは、日本に最後に住んでいたときの住所を管轄する「年金事務所」や「年金相談センター」で行います。

2.年金を受け取る金融機関を決める

海外に住んでいる場合でも、所定の手続きを踏むと日本だけでなく、現地の金融機関で年金を受け取れます。日本、海外、どちらの金融機関で受け取るかを選択可能。いずれの場合も、外国送金の方法がとられるため、届出書「年金の支払を受ける者に関する事項」を提出する必要があります。

日本の金融機関で年金を受け取る場合は、ゆうちょ銀行は指定できませんので、それ以外の金融機関を指定しましょう。

海外の金融機関での受け取りを希望する場合は、銀行を特定するための「SWIFT(またはBIC)」と呼ばれる、8桁か11桁の送金コードが必要。住んでいる国や地域によっては、その他の情報が必要となるケースもあります。

年金受給前に海外移住する場合にやっておくべきこと

1.任意加入手続き

海外に住んでいる期間は受給資格期間に合算できますが、受給額には反映されません。海外に居住しながら年金保険を続けるには、国民年金への任意加入手続きが必要です。

任意加入手続きは本人が日本に最後に住んでいた住所を管轄する、年金事務所や市区町村で行う必要があるため、出国の前に済ませておくと良いでしょう。

2.現況届の返送

海外に居住している場合も、日本に住んでいる場合と同様に、「現況届」の提出が必要です。提出を怠ると、年金の送金が一時的に止められてしまうため、忘れずに提出しましょう。